大学で一緒に演劇をやってる大谷くんから電話がかかり、
「ハラダさん、ちょっとはなしがあるんじゃけど」と言われた。
受話器のむこうの大谷くんは、すこし、間をおいてから
「ちょっと変なはなしじゃけん、ふたりだけではなしたいんじゃけど、、、」
と言った。
大谷くんは霊感があり、ちょっと変わってる人だったから(笑) 特に違和感は感じず「うん、いいよ」と返答した。深夜、おやじからパクって乗り回してる貨物ナンバーのパジェロで大谷くんを迎えにいき、三ツ城古墳までドライブして駐車場に車をとめた。そこまで大谷くんは、要件を話してくれなかった。
目の前の古墳は、たしかライトアップはされてなかったような気がする。いや、されてたかぁ、、、
「いまから話すことは、かなりおかしなはなしで」と大谷くん。「今まで誰にも話したことがないんじゃけど、、、」
「XXさんにも?」
XXさんとは、大谷くんの彼女。
「はなしてない」
「そっかぁ」
「うん。おかしなはなしじゃけん、わしのこと、頭おかしいと思わんとってね」
僕は大谷くんに断ってから、窓をあけ、煙草に火を点けて「うん、わかった」と返答した。
大谷くんは黙ったまま。話すかどうかまだ迷ってるみたいだ。人を殺したことがあるんだ、とでも言うんだろうか。でも、わしにそんなこと告白しても意味がない。わしは牧師ではない。違うな。なんだろう。幽霊関係の話じゃろうか。いや、それなら、ここまで迷わんじゃろう。それか、わしのことが好きで抱いてほしい、と告白するのだろうか。うーん。そのラインの話かもしれん。この車内の独特な緊張感、大谷くんの雰囲気は、たぶん、そうだ。
僕も特には急かさない。時間はある。
「むかし」と大谷くんが沈黙を破る。「高校生のときに、先輩に呼び出されて、こんな話をされたことがあるんじゃけど」
「うん」
「この宇宙を作った大いなる意志、通称、おやじ、は、近いうちに、地球の管理をしている中間管理職をクビにして、違う担当者を派遣する予定になってる」
うーむ。予想外の角度。
「おやじ?」と僕。
「うん。おやじ」
「語源がわからんて。大いなるの”お”と意志の”し”で、”お”と”し”はかかってるけど。”や”はどこから来たんじゃろう」
「わしもわからん。ただ先輩が、おやじって言ってたから、おやじ」
「うーん。そっかぁ」
細かいところが気になる。ディテールってとても重要。些細な断片によってリアリティが全破壊されるから。
いま現在、これを書いてる僕の記憶違いだろうか。「大いなる野望をもった意志」だったか、、、それなら省略して「おやじ」が成立しなくもない。
「で、先輩が言うには、おおたに、お前は、新しい担当者側の人間じゃ。そのために派遣されて来た。わしもそうじゃ」
僕はタバコを灰皿に捨てた。訊きたいことが山ほどある。担当者が変わる時期。どういうことがおこるとスケジューリングされているのか。まあ、つまりは、予言ではなく、預言が知りたい。だから、いろいろ僕は質問したと思う。それに大谷くんもいろいろと答えてくれたと思う。たぶん、古い側についてる人は淘汰されるとか何とか過酷な話だったような気がしなくもない。
でも、思い出せない、、、
「で」と大谷くん。「ここからが本題なんじゃけど」
まだあるんかい!
「ハラダさんが」と大谷くんは言ってメガネを外し僕をじっと見つめて「どちらがわの人間か、わからない」
「わからない、とは?」
「見れば、どちらがわの人間かほぼほぼ100パー分かるんだけど」
「まあ、霊感あるからね、おおたにくんは」
「うん。でも、はじめて、わからない人に会った」
「そっかぁ」
「だからこの話をしようと思った」
「そっかぁ。うん」
どちら側か分からないということは、シンプルに考えれば、どちら側でもない、ということになる。だから、僕は大谷くんに、
「たぶん、どちらがわでもないんだよ」
と言っておいた。
時は流れ、2014年9月27日。御嶽山が噴火。噴火による噴石で石像の首から上がもげた。
画像は、https://blog.goo.ne.jp/sakurasakuya7/e/45c3251c62cb0416f254cb785a7edfe9より取得。
ああ、はじまったんだな、と僕は思った。
国之常立神がクビにされたということなんだろうと思う。担当者交代。
国之常立神(くにのとこたちのかみ)は、日本神話に登場する神。『ホツマツタヱ』においては創造神である天御祖神によって創られ、遣わされたとされる。『日本書紀』においては初めての神とされ、一部神道・新宗教で重要視されている。Wikipediaより。
でも、、、大本教の意見と違うんだよなぁ、、、
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